講演に至った経緯
去る10月17~19日、日本形成外科学会の基礎学術集会が、お台場のヒルトン・ホテルで開催されました。18日の「AIを用いた論文執筆の現状と問題点」というセッションでは、Seeklを代表してシニア・マネージング・ディレクターの岡田が講演を行いました。
日本形成外科学会が発行するJournal of Plastic and Reconstructive Surgery(JPRS)は、創刊からSeeklが携わり、現在もコンサル型Editorial Officeを提供しています。こうしたご縁から編集委員長である多久嶋亮彦先生(杏林大学)より講演をご依頼いただきました。
JPRSは創刊当初から国際的なジャーナルとしての成長と発展を目標としています。Seeklは創刊の準備段階から国際的なデータベース収載を視野に入れたコンサルティングを提供しています。その結果、2022年の創刊からわずか2年という速さでWeb of Science収載(=ジャーナル・インパクト・ファクター取得)を達成しました。
JPRSは国際医学雑誌編集者会議(ICMJE) Recommendationなど国際ガイドラインに沿って運営されており、それらの改訂に合わせて常に投稿規定の見直しも行っています。そんな中、近年ICMJE Recommendationにも記載された生成AIと学術出版における利用について講演を行うこととなりました。
「AIを用いた論文執筆の現状と問題点」セッション
テーマ:AIを用いた論文執筆の現状と問題点
1.「医学雑誌投稿規定から見たAIと論文執筆」櫻庭実(岩手医科大学・JPRS編集委員)
2.「AIチャットボットの使用経験とリスク」舘一史(東北医科薬科大学)
3.「生成AIが研究と学術執筆に与える影響」中村知繁(順天堂大学)
4.「JPRSにおける生成AIの利用制限の解説」岡田達也(Seekl・杏林舍)
1はセッションの導入としてJPRSと同領域の複数のジャーナルにおける投稿規定の例などが紹介され、2では実際に論文執筆を行っている研究者が、研究者・著者目線で生成AIをどのように使っているか、またその経験から得たメリットとデメリットについて解説していました。3では実際にAIの研究と開発をしている先生の講演であり、基礎的な生成AIの仕組み、その機能、長所や短所、そして研究や論文執筆における活用法までと幅広く説明がなされ、非常にわかりやすい内容でした。4はSeekl岡田による講演でした。概要は次の通りです。
JPRSにおける生成AIの利用制限とは
はじめに生成AIの学術出版における複数の懸念事項について、なぜ生成AIの利用制限を設定する必要があるのか、その理由を含めて説明をしました。学術論文の執筆や査読における生成AIの利用には、大きく分けてAccuracy、integrity、Originality、Bias、Responsibility、Copyrightの6つの懸念があるとされています。これらを踏まえた上で投稿規定はどうあるべきなのか、解説を行いました。
ICMJE Recommendationでは1)著者として生成AIを含めることはできない、2)生成AIを引用元として文献に含んではならない、などが禁止事項として挙げられており、違反した際の責任の所在など、いまの国際的な標準を考慮したうえで説明をしました。またなんらかの形で生成AIを利用した場合の開示方法について解説を行いました。
いっぽう査読者に向けては、査読における生成AI利用のリスク、AI利用の制限などについても説明しました。
当日は多くの形成外科医と関係者でたいへん賑わっており、各セッションとも活況の様子でしたが、中でもこのセッションは他に比べて聴講者が多く、会場は満員状態でした。学術研究の視点からも、生成AIへの関心の高さをうかがい知ることができました。