CSE参加報告3:基調講演「信頼の変化:新時代における学術出版コミュニティ内における協調」

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CSE参加報告3:基調講演「信頼の変化:新時代における学術出版コミュニティ内における協調」

Johns Hopkins University Press の Chief Transformation Officer である Queen 氏の基調講演の様子をご紹介いたします。私たちが現在直面している変化の本質をとらえており、とても印象的でした。

技術革新と学術出版

講演の冒頭では、急激に変化と進化を続ける AI やインフラの発展は単なる“技術的な課題”だけに留まらず、学術出版の存在意義や永続性に関する課題になりつつある、と述べられていました。学術出版界ではここ30年の間にもオンライン化、オープンアクセス化といった変革を経験していますが、AI によるそれは質的に大きく異なります。それは過去の変革が紙⇒デジタルや購読モデル⇒オープンアクセスという「知識の伝達手段」に対するものであったのに対し、今回は「知識の取り扱い方」に対するものであることです。AI が論文を “読む” のではなく論文の内容を要約、分析、再構成することで、文脈など “信頼の源泉” が見えなくなっている危険性があるとのことです。その実例として、Paper Mill の猛威や著者のなりすましなどが挙げられていました。

AI活用のために

不足する査読リソースへの対策として AI の活用は大変注目を集めていますが、仮に投稿・査読プロセスを全て AI が行った場合、そこには著者の意図や査読者の意見、Editor の判断などが除外され、学術としての「意味」や「価値」が失われてしまう可能性があります。その場合、本来通じるべきものが誤った解釈を生むリスク、また最悪の場合は悪用されてしまうリスクも否めません。この様な状況を防ぐためには学術出版コミュニティが一体となって仕組みを作る必要がある、というのが Queen 氏の考えです。例えば CrossRef や ORCID の様な既存の仕組みを組み合わせることによって、これらのリスクを大きく軽減することが可能であると語っていました。

また講演の中で AI は効率化ツールとしてではなく、人間が判断するための情報の幅を広げる道具であり、判断の質を守るための手段として語っていました。査読者探し、利益相反チェック、関連文献の抽出など、“人間がやる必要のない作業”を AI に任せることで、ジャーナル運営側は本来の仕事—判断・解釈・価値づけ—に集中できることから AI を使って人間の強みを取り戻すという発想につながると述べており、またこれからの学術出版の勝負は、“どこで出版されたか”ではなく、“どこに移動しても信頼が見えるか”、多様化するプラットフォームの中で信頼が旅をできるかどうかが問われていると結論付けていました。

価値観として取り組むべきこと

この講演を聞いて「学術出版の未来」の話においては技術的な側面に偏りがちですが、本当に大切なのは価値観であり、我々学術出版業界がコミュニティとして取り組む必要があるのは次の点だと強く感じました:

  • 何を守るのか
  • 何を手放すのか
  • 何を共同でつくるのか
  • どのように信頼を未来へ運ぶのか

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