CSE参加報告4:学術論文投稿数の激増とその裏に潜む課題

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CSE参加報告4:学術論文投稿数の激増とその裏に潜む課題

CSE参加報告第4弾:学術論文投稿数の激増とその裏に潜む課題

世界中に大きな変化をもたらしているAIですが、実は論文投稿数の急増にも大きな影響を及ぼしています。Silverchairの調査によると、2026年のScholarOneを通じた論文投稿数は86万件に達する見込みで、2025年の65万件から実に33%もの増加となります。この劇的な変化の背景には、AI技術の台頭とペーパーミルの進化が大きく関わっています。

AIが論文執筆に与える影響とペーパーミル

投稿数が大きく増加している背景には、アイデアの壁打ちから誤字脱字の修正など、AIによって論文執筆プロセスの効率化が進んでいることがあります。しかしこれは不正論文の執筆までも効率化してしまっています。昨年のCSE参加報告「2024年CSE参加報告その2:論文工場 Paper Millsの暗躍」でも取り上げた「ペーパーミル」は単なる論文執筆代行から、システム化された運用モデルへと進化し、学術界の健全性を脅かしているのです。

Desk Reject率と査読者受諾率の変化

AIによる論文執筆の効率化は、投稿数の増加を招き、出版側の負担を大きくしています。例えば2025年のDesk Reject(編集段階での不採択)率は72%と高水準でした。また査読者の受諾率は43%(2018年)から22%(2025年)まで減少しています。投稿数の急増と論文の質の低下が、高いDesk Reject率や査読者の受諾率低下を招いていることが伺えます。

不正論文のチェックメカニズム

不正論文を査読工程に回さないために、編集事務局では一般的に以下のプロセスで不正論文への対応を行います。

  1. 不正のシグナル検出
  2. 関連情報の検証
  3. 実質的な調査

しかしペーパーミル論文は非常に巧妙化されており、簡単には見抜けないレベルのものも出現しています。

E-mailアドレスによるペーパーミル検知!?

それに対して今回のCSEで共有された非常に有効な検知方法として発表されたのは、なんとe-mailアドレスの信憑性の確認です。特に注目すべきポイントは以下の通りです。

  • 所属機関でないメール(フリーメールなど)
  • 氏名とメールアドレスの@の前が一致しない
  • 同じ著者でありながら過去に使われていないアドレス
  • 複数著者が所属機関ではないドメインを使用
  • 投稿時期を含む数字入りアドレス
  • 著者間で類似したメールアドレスパターンの利用

また、共著者と責任著者が似たメールを持つ場合も要注意です。同時にメールアドレスだけではなく、著者の所属機関のホームページや過去に出版された論文、ResearchGateなどのデジタルフットプリント(オンラインの足跡)を活用して信頼性を確認することも推奨されました。

最後はやっぱり人間の目

現在、学術出版業界ではあらゆるスタートアップがペーパーミルの検知を含めた不正検知機能を開発していますが、ペーパーミルなどの不正を行う側の技術も進み巧妙化していることから、当面はイタチごっこが続きそうです。そんな中で最終的にやはり頼りになるのは人間の目であると言うことが、今のAIの現状であり限界である、と言えるでしょう。

ジャーナルとしてはAIの活用に関するポリシーとガイダンスを公表し、ポジションを明確化することが、学術出版の質と信頼性を守るための最初の取り組みになると考えています。今後もAI技術とペーパーミル対策の両面から、学術界の透明性と健全性を強化していくことが求められます。AIの出現は学術出版界に大きな影響を与え、今我々の業界はこれまでにないレベルの変革期を迎えています。AIの普及とペーパーミル問題にどう立ち向かうか、今後の動向に注目が集まります。