「二重出版」とは、発表済みの著作物と重複した内容のものを、過去の出版物を明記しないまま、あたかも新規の著作物であるかのように発表する行為を指します。学術出版において二重出版は禁止されています。しかし、こうしたルールを正しく理解していない著者は少なくないため、「二重出版に該当すると思っていなかった」というケースが数多く見られます。そこで今回は、二重出版について、ICMJE(国際医学雑誌編集委員会)およびCOPE(出版倫理委員会)の指針を元に解説します。
1. 学術出版における二重出版とは
ICMJEは「既に出版されたものと実質的に重複し、明確な引用がない出版」を二重出版(duplicate publication)と定義しています。COPEも同様に、出典や相互参照のない再出版を冗長(redundant)と位置づけ、編集者向けの対応フローチャートを公開しています。
2. なぜ二重出版は認められないのか
二重出版が認められない理由は複数あります。例えば同じ論文が2つの異なるジャーナルで出版されていると、どちらが原文なのかが不明になります。また研究業績を評価する際にも、同じ内容の論文を重複してカウントすることになり、公平な評価ができなくなってしまいます。そのほかにもICMJEは、複数誌が同一原稿の査読・編集を重複して行うことで、それらに費やされた学術資源が無駄になる点を指摘しています。さらに、すでに出版されているテキストやデータの著作権の所在が不明となり、結果として著作権の侵害に該当し得ます。
3. 同一の内容を複数回出版できるケースとは
出版済みの研究成果であっても、別の論文として再度の出版が認められることもあります。ICMJEは下記のすべてに当てはまる場合は、正当性のある再掲載=二次出版として認めて良いとしています。
- 第一出版元と後発出版先の編集委員長が二次出版に同意している
- 第一出版元の編集委員長が後発出版を認めている
- 後発出版先の編集院長が二次出版を認めている
- 一次出版の優先権を尊重し、著者がそれぞれのEditorと交渉して出版の間隔を決める。
- 二次出版は違う読者集団が対象である(短縮版の場合も同様)
- 二次出版は一次出版の内容を忠実に反映している
- 二次出版は一次出版が他で既に掲載されていることを明記し、文献として引用する。
- タイトルに二次出版であることを示す(一次出版の完全版、要約版、翻訳版等など)。
4. 二重出版を疑われないために、著者として行うべきこと
前述の通り、同じ内容の論文を複数発表するは原則として禁止されています。論文投稿時には余計な疑いをかけられないよう、次の点に注意しましょう。
- 同じ論文を並行して複数のジャーナルに投稿をしない―二重投稿(duplicate submission)としてICMJEで禁じられています。
- 関連文献・抄録やプレプリントの掲載などはすべてを開示し、カバーレターで重複の有無を説明する。
- 自己剽窃を避ける
- 1研究1論文を徹底する。1つの研究をベースに複数の論文を執筆する事でサラミ出版の疑いが生じる場合があります。
また2次出版を行う際は、事前に次の点の確認を行ってから投稿することをお勧めします。
- ICMJEの定める条件に当てはまっていることを確認。
- 第一出版元と後発出版先への二次出版に関する確認。両方の編集委員長に書面で確認することをおすすめします。
- 著作権確認:原著の出版社が権利を持つ場合、再掲載許諾を文書で得ることをおすすめします。
5. ジャーナル運営側の注意点
既に発表済みの論文を、それと気付かずに掲載してしまうと、ジャーナルの信頼性の低下や掲載論文の撤回など、さまざまな問題を引き起こします。二重出版を避けるためにも、投稿・審査時におけるチェックが必要です。
- 投稿規程に二次出版ポリシーを明記し、著者に原著の提示を義務付ける。
- 類似性検査ツール(Crossref Similarity Check等)を導入し、疑義があれば著者・機関へ照会し、必要に応じて訂正・撤回・機関報告を行う。
- 発生に備えて、COPEのフローチャートに沿った調査手順を整備する。
特に類似性検知ツールは、出版済みの著作物と投稿論文の類似度を瞬時に算出できるため、重複出版を防ぐ強力な手段になり得ます。しかし、論文が公開前の場合や翻訳版の場合は検知することができませんので、過信は禁物です。二重出版が発覚した場合、その対処方法は複雑であり非常に多くの労力と時間を要します。ジャーナル運営側としては反が発覚した場合の対処などを含めて、事前に倫理規定を策定し、公開することが必要です。また翻訳版など、著者が悪気無く二重投稿を行ってしまうケースも稀に見られます。このように著者が意図せず二重投稿を行ってしまう背景には、学術出版に関する知識の不足があります。若手研究者向けに二重出版やサラミ出版のリスクを周知し、再発防止のためのガイドラインを公開することも有効でしょう。
Seeklでは不正が発生した際の対応に関するアドバイスだけではなく、国際基準に照らし合わせた投稿規定のチェックや倫理規定の策定のサポートも行っております。お困りの際はぜひお問い合わせください。

