先日、弊社取扱いの論文投稿査読システムScholarOne Manuscripts(S1M)について、アジア・パシフィック(APAC)地域における営業戦略会議が韓国で開催されました。本会議は、S1M開発元であるSilverchair、韓国S1M販売代理店、および弊社の三社間で実施されたものです。
主な議題はAPAC地域におけるS1Mの販売状況でしたが、その中で中国および韓国政府による研究者や学術ジャーナルへの助成制度、政策についても言及がありましたので、併せてご紹介します。
中国:APCへの助成に制限
2026年3月1日、世界最大級の研究機関である中国科学院(CAS)は、一定額以上のAPC(論文掲載料)を設定するジャーナルへの、中央政府の助成金を用いた支払いを禁止しました。規制対象には、例えばNature Communications($7,350)、Cell Reports($5,790)、Science Advances($5,450)などが含まれています。
この方針はCASだけでなく、科学技術省(MOST)や国家自然科学基金(NSFC)にも適用され、現在のところ約100誌が規制対象となっているようです。試算によると、中国の研究者の約40%がこれらの雑誌に投稿しており、今後、投稿先の選定に大きな見直しが図られるものと予想されます。
一方、中国国内のジャーナルに対しては、地域ごとに異なる政策や助成プログラムが施行されています。例えば四川省では、学術コンテンツや関連データの国内サーバーでの保管が助成の条件とされており、研究データの主権および管理を国内で保護する方針がうかがえます。
また、北京では、海外ジャーナルの編集者や運営スタッフを当該地域に拠点を置く国内ジャーナルで雇用すること、また上海では、発行元の変更等により国際誌を自国に移管することなどが支援されているとのことです。
韓国:国際発信力を強化
韓国では、主に韓国科学技術団体総連合会(KOFST)と韓国研究財団(NRF)が、学術団体などのジャーナル発行機関に対し公的支援を実施しています。
KOFST:自然科学、工学、農水産、医学といった科学技術系の学会を対象に、学術誌の国際化を推進しています。具体的には、電子ジャーナル化、DOI付与、XML対応、さらにはSCIEやScopusといった国際的な索引データベースへの収載を目指す取り組みを支援しています。
NRF:人文・社会科学系を中心とし、Korea Citation Indexに掲載されているジャーナルを主な対象としています。編集体制の強化、電子化、英語化推進、海外編集委員の招聘など、ジャーナルの質と国際競争力向上に向けた取り組みを支援しています。
まとめ:学術情報を囲い込む中国、国際発信を強化する韓国
中国では、高額なAPC(論文掲載料)を課す海外ジャーナルへの論文投稿を制限する政策が施行されたことにより、研究者の投稿先選定に変化がもたらされるものと見られます。加えて、データの国内保管やジャーナル運営の国内化を後押しするなど、学術情報の国内での管理を強化する動きが見て取れます。
一方、韓国ではKOFST(韓国科学技術団体総連合会)およびNRF(韓国研究財団)を中心に、電子化や国際的な索引データベースへの収載、編集体制の強化、英語化などが支援され、ジャーナルの質と国際発信力の向上が図られています。
このように、学術情報の国内への集約を目指す中国と、海外への発信を通じて国際的な存在感を高めようとする韓国とでは、その目指す方向性に大きな違いがあると言えるでしょう。

