質の高い論文が多く集まる雑誌とはどのようなものでしょうか。例えばジャーナル・インパクトファクター(JIF)を取得することや、PMC・MEDLINEなどの国際的なデータベースへ収載されることはジャーナルのブランド価値を高め、研究者たちの注目を集めることにつながります。これらの目標を達成するためには厳しい審査を通過する必要があり、そのためには出版倫理基準を定めている国際的な団体が発表するルールに沿ってジャーナル運営を行うことが重要となります。今回は、科学分野の出版ルールとして権威のあるCSE Recommendationsについてご紹介します。
CSEとは
CSE(科学編集者会議)は、科学分野で出版を行う編集専門家による組織です。CSEは出版倫理におけるベストプラクティスとしてCSE Recommendationsというガイドラインや、論文の体裁の整え方をまとめたCSE Manualの発行、ジャーナル出版に関するトピックを発表する年次総会の開催といった活動を行っています。ちなみにこの年次総会にはSeeklも毎年参加しています。
CSE Recommendationsの内容
ガイドラインは大きく分けて3章で構成されています。
1章:ガイドラインの目的
2章:Editorや著者、査読者、スポンサーの役割と責任について
ジャーナルのオーナーやメディアとの関わり方、ソーシャルメディアの活用
3章:研究の不正の種類、不正があった場合の対応方法
良いジャーナル運営のためには全ての内容を網羅する必要がありますが、今回は特に注意しなければならない重要なポイントを5つだけご紹介します。
1. Authorship
著者の選定は研究者自身が行い、研究に十分な貢献をした者は著者として、そうでない者は謝辞に記載します。著者は研究内容の正確性と完全性に責任を持ち、すべての著者が原稿を承認する必要があります。論文ステータスや名誉のために研究に貢献していない人物を著者として加えたり、著者としての地位を売買したり、匿名で投稿することは不適切な行為です。
2. 利益相反(COI)
EditorはCOIの状況を認識し、バイアスがかかった論文を出版しないように適切な行動を取る必要があります。COIには個人的、政治的、財政的、学術的、宗教的な要因があります。論文の出版プロセスに関わる全ての人 (Editor、査読者、著者)のCOIを開示し、COIのある査読者はその論文の査読を行わないことが重要です。
3. 編集の自由と透明性
Editorは、出版社やスポンサーなど外部の圧力に左右されず、自由に論文を選定し、編集する権利があります。しかし、不適切に記事への引用を増加させる行為は容認されていません。また、編集委員会の構成や資金、査読方針など、雑誌に関する情報を透明に開示する必要があります。
4. 多様性や公平性
科学出版において、人種、性別、宗教、障害など、様々な要因に基づくバイアスが出版内容に影響を与えてしまうことは問題となります。バイアスを避けるためには、下記のような様々な取り組みが必要です。
- 編集委員、査読者、著者に多様なバックグラウンドを持つ人々を積極的に招き入れる。
- 性別や性的指向など、すべての読者を尊重するような言葉遣いを心がける。
- 性別、人種、所属機関などのデータを収集し、現状を把握する。
- 包摂性に関する取り組みについて、読者や関係者に積極的に情報公開する。
5. 不正への対応
研究不正は、研究対象者の虐待、データの捏造や改竄、盗作や剽窃など、科学的な誠実性に反する行為を指し、研究対象者への害や科学的記録の歪曲につながる違反行為です。各国では研究不正に対応するためにさまざまな機関や制度を設けており、不正を行った研究者に対して譴責、資金停止、資格剥奪などの処分が科されることがあります。CSEは不正を特に重く捉えているようで、不正があった場合の調査の行い方や、Errata(訂正)やRetraction(撤回)などの論文の訂正方法について具体例や文献を挙げて詳細に説明しています。
上記は一部分となりますが、これらのルールを雑誌の運営上の適切な場所に反映させ、実際に運用していくことが重要です。
Seeklのジャーナル・インパクトファクター取得コンサルティングや国際データベース収載コンサルティングサービスでは、国際的な出版倫理基準に沿ったジャーナル運営をサポートします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考文献