ICMJEアップデート<2025年1月>

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2025年1月、国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)は略奪的ジャーナルや疑似ジャーナルへの対策に関する指針と国際統一投稿規定(ICMJE Recommendations)のアップデートを発表しました。

Up-Dated ICMJE Recommendations (January 2025)

略奪的ジャーナルや疑似ジャーナルは学術出版界全体の大きな問題であり、ICMJEが指針を改めて発表したことは大きなニュースと言えます。またICMJE Recommendationは医学領域を対象としたものですが、医学以外にも多くの分野でも参考にされている、学術出版の国際基準の一つです。

それではアップデート内容を見ていきましょう。

略奪的ジャーナルや疑似ジャーナル対策に関する指針

◆略奪的ジャーナルや疑似ジャーナルとは

略奪的ジャーナルや疑似ジャーナルは高額な投稿料/掲載料の徴収を目的に発行される学術雑誌を差し、ハゲタカジャーナルとも呼ばれています。こうしたジャーナルは適切な査読が行われないため、学術的な信頼性や質が保証されず、学術界にとって大きな問題となっています。

◆ハゲタカジャーナルへの投稿を避けるために著者ができること

著者が掲載先のジャーナルの信頼性をしっかりと調べることは非常に重要です。身近な例でいえば研究機関の先輩や指導教官からのアドバイスは、とても価値ある情報でしょう。また信頼のおけるガイドラインやチェックリストを参照するのも効果的です。例えばWAMENational Institutes of Health は、研究者が適切なジャーナルを選ぶための基準、推奨事項を公開しています。

ハゲタカジャーナルは正当なジャーナルに偽装していることがあります。Call for Paperを受け取った場合にはメールアドレスや文中のURLが正規の団体のものと一致していることを注意深く確認しましょう。また正規の団体にそのメールを転送し、本当にCall for Paperを送ったのか確認するのも効果的です。

◆ハゲタカジャーナル対策としてジャーナル運営側ができること

ジャーナル出版側が第一にやるべきことは、著者への情報提供です。ハゲタカジャーナルによって最も被害を受けるのは著者です。参考資料の紹介などの継続的な啓もう活動が被害者を減らすことに繋がります。

もし自誌を模したハゲタカジャーナルの存在に気が付いた場合、注意文をwebサイトに掲載し、さらに注意喚起のメールを著者や査読者といった関係者に配信することも検討すべきです。

ハゲタカジャーナルを発行するは多くの場合、実体のない幽霊団体であり、法的措置を取るのは困難です。しかし停止通告書の発行などを通じて、略奪的な行為を抑止できる可能性があります。

 

ICMJE Recommendationsの改訂

◆主な改定内容

  • 略奪的または似非ジャーナル(セクションC.1.a)
    • 上記指針へのリンクを追記
  • ジャーナル査読プロセスにおける適時性と対応性、多様性と包括性(セクションC.2.bおよびII.C.2.e)
    • 著者が原稿撤回依頼した場合の編集者の対応
    • 人物が含まれる画像を公開する際の注意事項
  • 訂正とバージョン管理および科学的不正行為(セクションAおよびIII.B)
    • 過去(10年以上前など)に出版された論文の訂正
  • 引用文献の正確性における著者の責任(セクションA.3.g.i)
    • 参考文献における著者の引用に関する責任

いずれも重要な内容ではありますが、AIに関する記述が追加された昨年に比べるとややマイナーな改訂となったようです。

今回ご紹介したICMJE Recommendationの他にも、ジャーナルが参照すべきガイドラインはいくつもあり、いずれも定期的にアップデートされています。こうした変化を見逃していると、著者から敬遠されてしまったり、Web of Scienceなどのデータベースから除外されてしまう恐れがあります。Seeklコラムでは学術業界のトレンドも発信していますので、ぜひジャーナル運営の参考にしてみてください。

また情報は集めるだけではなく、ジャーナル運営に落とし込むことが最も大切です。Seeklでは投稿規程などのアップデートはもちろん、ジャーナルの運営状態が国際基準にあっているかの診断も提供していますので、お気軽にお問合せください