2024年 Web of Scienceから124誌が除外! 対象となったジャーナルの特徴とは?

HOME » コラム » 2024年 Web of Scienceから124誌が除外! 対象となったジャーナルの特徴とは?

Web of Science (WoS)はClarivate社が運営する世界最大級の学術データベースです。厳選されたジャーナルの書誌情報と引用データを中心に収集しており、世界中で研究者の活動を支えています。厳しい審査をクリアしてWoSに収載されたジャーナルには、ジャーナル・インパクトファクター(Journal Impact Factor = JIF)が付与されるため、例年数多くのジャーナルが審査に挑んでいます。
その一方、WoSのクオリティを保つため収載誌の見直しも行われていることをご存じでしょうか。

2024年もWoS収載誌の大規模な見直しあり

2023年、Clarivate社は主要データベースであるSCIEに加えてESCIの収載誌にまでJIFの付与範囲を拡大しましたが、同時に収載ジャーナルの大規模な見直しも進めています。2023年には213ジャーナルがWeb of Scienceから除外、JIFをはく奪されましたが、2024年も124が対象となりました。

Web of Scienceの除外対象となるケースは3つあります。
1) Editorial De-listing (編集、出版方針による除外)
2) Production De-listing (出版上の問題による除外)
3) Cease (廃刊、休刊などによる除外)

1)Editorial De-listingは編集や出版方針によって除外されることで、研究倫理や出版倫理、適切な情報公開、JIFに関連した問題などが対象となります。2)Production De-listingは言語表現、ホームページ記載情報の不備、発行スケジュールの順守、文献の正確性などが原因での除外です。3)Ceaseは廃刊や休刊が理由となります。

2024年に除外されたジャーナルでは下記の様になっています。
合計:124誌
1) Editorial De-listing … 48誌(38.7%)
2) Production De-listing … 42誌(33.9%)
3) Cease … 32誌(25.8%)
*その他(理由公表無し) … 2誌(1.6%)

WoSから除外されたジャーナルの事例と特徴

興味深いのは必ずしもJIFが低い事が理由ではないという事です。2024年の除外リストでは
最高値 14.8
中央値 0.2
最小値 0.1未満
となっており、確かにJIFが0.1以下のジャーナルも含まれていますが、それらは全体の12%しかありません。その反対にJIFが10を超えているジャーナルも含まれています。

高いJIFを保持しながらも除外されるケースでは、JIFの意図的な操作を疑われたことが除外の主な原因のようです。過去には「極度の自己引用」「偏った引用先/元」「特集号(Review Article)の過度な頻度での発行」などがJIFの意図的な操作であるとして指摘された事例があります。

例えば近年急成長していた欧州の某OA誌専門の出版社は、世界中から著名な研究者をゲストEditorとして招聘、時には1日に4号も発行するなど異常なハイペースで特集号を乱発していました。特集号やReview Articleは比較的引用されやすい事が知られていますが、結果として高いJIFを取得するジャーナルもみられました。しかしこの活動は「特集号の過度な頻度での発行」によるJIFの意図的な操作と見なされ、出版する多くのジャーナルがWoSから除外されてしまいました。

「偏った引用先/元」はある特定のジャーナルからの引用/被引用が目立って多い場合に該当します。研究領域がニッチな場合、ジャーナル数が少ないため特に注意が必要です。またジャーナルの編集委員長が複数のジャーナルで編集委員長を務めており、そのジャーナル間での引用/被引用が多いことでも不正を疑われてしまう可能性もあります。

 

これらの事例からわかることは、WoS収載に収載されてJIFを取ったら安心、ではないということです。大切なことは、出版倫理を守ること、そして学術出版界のトレンドを把握してジャーナルの運営を適切に修正する体制を築いていくことです。

また、毎年発表されるJIFに一喜一憂するだけではなく、被引用状況を分析し数値の「中身」を分析することで、着実にジャーナル・インパクトファクターを維持する事が可能になります。それは結果としてJIFを伸ばすことに繋がります。

SeeklではWeb of Science収載に向けたサービスジャーナルの引用/被引用状況の分析に加えて、ジャーナルの運営状況診断サービスなど、ジャーナル運営に関するあらゆるサービスを提供しています。ジャーナル運営やJIFの事でお悩みや心配な事があれば、ぜひお問合せください