理想的な研究者への評価とはどのようなものでしょうか。
研究者が評価されるとき、多くの場合は執筆論文の数など出版実績を中心に行われます。
もちろん論文の出版は研究者の最も大切な活動ですが、他にも「研究者」は教育活動、査読、学協会での活動など様々な業務を抱えています。
そのため出版実績だけでは研究者の活動を正しく評価できない、という指摘は繰り返しされてきました。
こうした現状を研究者自身はどのように捉えているのでしょうか。
Springer Nature は世界 6,600 人以上の研究者を対象に調査を行い、ホワイトペーパーとして公開しました(https://stories.springernature.com/state-of-research-assessment)。
本コラムでは、その調査結果をもとに、研究者に対する評価の現状と、研究機関・研究者が直面する課題について考えていきます。
◆ほとんどの研究者にとって“指標”は依然として支配的

前述の通り研究評価の指標としてもっともよく用いられるのは出版した論文数や被引用数などの出版指標です。しかしライデン宣言、DORA、CoARAなど研究評価改革の取り組みは、研究評価の指標としてジャーナルや出版物の指標に過度に依存することに対し、普遍的に異議を唱えてきました。
定量的な指標としては他にも助成金の獲得額、指導する学生の数、査読の件数などが用いられることもあるようです。
今回の調査では約 55%の研究者が、自身の業績評価はこうした指標によって定量的に行われていると回答しています。中でも特に論文数や被引用数、そして Journal Impact Factor(JIF)といった“出版指標”は、依然として研究評価の中心に位置していると認知されていることがわかりました。
近年はプレプリントも大きな存在感を放っていますが、”研究業績の評価”という面では変わらず査読誌での出版が重要視されているようです。
なお出版指標以外の教育活動、査読、学内外での貢献といった「研究以外の役割」も評価対象には含まれているものの、論文発表などに比べるとその重みは限定的なものと認識されているようです。
◆定量的手法による評価は受け入れられているが・・・
興味深いのは、多くの研究者が現在の評価制度を全面的に否定しているわけではない点です。「研究以外の役割」がさほど重要視されていないにもかからず、特に昇進やキャリア形成の場面では、約 75%が現在の評価方法を肯定的に捉えていると回答していました。

その一方、現在の方法が研究成果を適切に評価できているか、という質問に対してはいずれの項目も約4割が賛成、約4割がどちらでもない、残りの2割が反対という結果になりました。
出版実績などを基本とした現在のやり方は広く受け入れられている反面、ベストな方法ではないと感じている人も多そうです。
◆理想の研究評価とは
続いては理想的な評価項目の比重についてです。

理想的には研究成果物の比重を58%から46%まで下げ、その他の貢献とのバランスをとりたいと考えている人が多いことがわかりました。主に論文を元にした評価ではサイクルの短い研究ほど有利になりやすく、研究評価における成果物への偏重は、研究の多様性を失うことに繋がります。
これはDORAなどの研究評価改革の取り組みが目指す方向性とも一致しており、業界全体の問題意識の表れと言えるでしょう。
研究成果物の比重を下げるという点はある程度合意が形成されているようですが、その一方、その他の貢献活動に関する評価については様々な意見があることがわかりました。活動内容が多様であり報告事項の取りまとめが非常に煩雑であること、また定性的な評価にならざるを得ず、評価者の主観に寄って左右されることへの懸念の声もあったとのことです。
◆まとめ
研究評価に関する調査結果は次のようにまとめられます。
・研究者は主に論文などの研究成果物を評価され、その他の貢献活動も評価されるもののその比重は少ない
・この状況は広く受け入れられているが、ベストではないと考えている研究者も多い
・理想的には評価における研究成果物の比重を下げ、その他の貢献の比重を上げたいが、そのためには課題も多い。
ほとんどの研究者は研究成果物とその他の貢献活動をバランスよく評価されることを望んでいますが、作業量の増加や定性的評価の難しさが懸念され、ジレンマに陥っていることがわかりました。
この問題の解消には出版指数への偏重を改めること、報告のための事務作業負担軽減、透明性の高い定性的評価の仕組み作りが必要であり、大学研究機関を含め学術出版界全体として取り組んでいく必要があります。
ジャーナルとして取れる対応は限られますが、例えばオンライン投稿査読システムにORCIDを導入するだけでも出版実績の取りまとめのサポートに繋がります。小さな改善を積み重ねて研究者にとって居心地の良い出版環境を整えていきましょう。
[参考資料]
Springer Nature (2025, April). The state of research assessment: Researcher perspectives on evaluation practices. https://stories.springernature.com/state-of-research-assessment

