CSE参加報告2:査読の新たな可能性

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CSE参加報告2:査読の新たな可能性

2026年のCSE Annual Conferenceでは、多様性やバイアスについて考えるセッションが複数ありました。質疑応答も活発に行われており、学術出版の分野においても、より開かれた体制を目指して取り組みが進められていることが伺えました。今回はその中でも、「査読者選出」における多様性についてのセッションをご紹介します。

査読の理想と現状

査読者選出は、ますます多くのジャーナルで課題となっています。何件も査読依頼を送っても承諾してもらえず、Editor自ら査読を行う、などというケースも少なくありません。さらに多様性まで考慮しなければならないのか、となると頭を抱える方も多いかもしれません。しかし今回のセッションから見えてきたのは、多様性を考慮することは新たな条件付けではなく、むしろ新たな査読者の可能性を広げる、ということでした。

まず、なぜ査読者の多様性が求められるのでしょうか。編集委員や著者の多様性は、学術データベースの審査時にも求められることがありますが、査読者の多様性に言及されることは多くはありません。査読者情報は公になることが少なく可視化されづらいですが、多様な査読者を確保することで、より多くの視点から審査することを可能にし、公平性や研究の質の向上が期待できます。

しかし実際に現場レベルでは、査読者選出において様々な課題があります。会場からは、そもそも査読者の確保自体が困難であることや、著者の地域と査読者の地域に偏りが見られるなどの意見が出ていました。そのほか、地域や国籍による先入観があるケースや、若手や周縁化された人々が査読者として選出されることが少なく、参入が困難なケースも挙げられました。

査読における多様性向上のために

理想と現状のギャップを埋めるために、解決策としては大きく三つの観点から提案がなされました。

①「人」による解決案

  • 様々な地域の研究者を編集委員会に就任してもらい、そのネットワークを利用した査読を依頼
  • 査読トレーニングやワークショップの実施による教育

②「制度」の解決案

  • 経歴の記載やORCIDの使用により査読者情報の可視性向上
  • グループレビューの導入
  • 経験者と若手の組み合わせでの共同査読の実施

③「技術」の解決案

  • AIによる査読者検索や非英語話者の補助、査読コメントの整理など
  • 途上国や紛争地域など、リソースに制約のある環境に配慮した設計(多言語/モバイル対応、低帯域環境での利用など)
  • 高機能よりも使いやすさ、アクセスしやすさを重視した改修

セッションでは上記のように「人・制度・技術」の三方向からの取り組みが必要だと強調されていました。現在ジャーナルが持っているリソースから選出するだけでなく、リソース自体を広げていこうという姿勢に、現状を打破する可能性を感じました。

国際的にも多様性や包括性が求められる傾向が強まり、ガイドライン策定や編集者教育のパッケージなど、学術出版においても様々な取り組みが実施されています。こういった傾向をジャーナルの「新たな課題」ではなく「新たな観点」として捉えることで、思いがけず今抱えている課題解決の糸口となるのかもしれない、と考えさせられたセッションでした。

多様性に関する取り組みは、なかなか手を付けるのが難しく感じられるかもしれませんが、既存の身近な問題を通して考えていくこともできます。ジャーナルの運用や課題について考えられる際、ひとつの観点として取り入れてみることをおすすめします。